自然を優先〜露地栽培に拘る逸品の野菜づくり〜
~驚きと感動が広がる拘り野菜~
はじめに
私は幼少のころから、魚釣り、キノコ採り、山菜採り等の里山が遊び場で、豊かな自然に囲まれた環境の中で育ってきました。そのような中、定年後の第二の人生は自然に感謝し、自然との共存を図り、自らの経験と個性を生かし、大量安定生産が難しい露地栽培にトコトン拘る野菜づくりに挑戦していきたいと思っています。
そのためには、今後は郷土で逸品といわれる手作りでの拘り野菜を育てご賞味いただき“見て、食べて驚き・感動・話題性”を世の中に提供していきたいと思っています。
その野菜を見て食べた時の印象に残る感動は生命の活力源になります。そして大切な人へ思わず話したくなり、水面に広がる波紋のように人の輪が広がり人生が豊かになります。そのことが皆さんへの感謝の気持ちと、私自身が大切にしている『おもてなしの心』です。
拘りの逸品 椎茸の栽培
きっかけは、幼いころから我が家には自家製の原木椎茸が食卓にあり、その味は忘れられない。そのため、ホダ木が劣化して椎茸が生えなくなれば父親に無理を言って、椎茸を栽培してもらっていた。ホダ木としては50本程度であったように記憶している。その父親も約2006年頃から病気がちで、今まで当たり前だった自家製の原木椎茸が食卓から消えましたが、その父親も今年(2017年)2月に88歳で他界しました。
山里にある田んぼは、周辺の雑木による日照不足でコメ栽培に支障がでたため、立木伐採の必要性がありました。その際にコナラ・椚等で程よいサイズをホダ木とし、その他は友人に声をかけ、薪ストーブ用の薪としてプレゼントしてきました。
結果として ①日照不足の解消 ②椎茸原木栽培 ③薪 により一石三鳥となります。
2005年から原木椎茸栽培を始めましたが、我が家で消費するための栽培でした。中でも出来の良いものは大切な人にプレゼントしてきました。皆さんから大変好評であったため、毎年伐採をしてほだ木も昨年で累積800本となり、自然を優先し感性を信じての拘りの椎茸栽培に一定の手ごたえを感じつつ今後も切磋琢磨してまいります。
椎茸栽培は、大切に育てた“山のアワビ”
新たな挑戦としてチェンソーを2005年に購入し、独学による立木の伐採を始め、最大斜度45度の急斜面での伐採は危険との隣り合わせ、長さ1mに切断した原木を各一本ずつ表面の木皮を傷つけないために、山肌を担いで丁寧に運び、自宅にて約1か月間自然乾燥させています。丁寧に運ぶ理由は、原木の木皮に傷があるとその傷口から雑菌が入ってしまいます。さらに、伐採直後の原木には自衛の殺菌作用があり植菌後に椎茸菌の育成が妨げられ、自然乾燥させることで、殺菌作用が失われてから植菌する必要があるからです。
※斜度45度でのチェンソーによる生木を伐採、運搬
ほだ木の太さについては、一般的には作業性を考慮して10~15cmですが、敢えて20cm前後の太めのものに(最大重量は40kg超)重点をおいて作成しています。その根拠は、太いほだ木は木皮が厚く劣化が遅い、そのため生命力の強い椎茸のみが命を繋ぐことができる自然界を尊重した椎茸栽培です。
しかし、25cm(長さ1cm)を超える生木は体重50kgの私の体力では重すぎて人力では運べません。一見非効率的ですが、敢えて非効率を採用することで、肉厚で生命力の強いものが栽培できます。決して大量生産や効率的ではありませんが、地道にコツコツと自分のできる身の丈に合った作業を基本としています。
※ 『 山から伐採した原木を約1か月乾燥、植菌の後に檜林でじっくりと自然熟成 』
椎茸菌については、津山JAよりNO.115を購入して植菌していますが、NO.115は、現在石川県(能登半島)で栽培している高級品種“のとてまり”と同類の品種です。通常の椎茸との違いは、超肉厚で寒い時期の11月下旬頃から生え始め、寒冷下でじっくり成長していくことで風味とアワビに近い食感が特徴で“山のアワビ”と言われる所以です。国内において原木栽培における現状での最高級の品種です。
植菌後には、自宅に近い檜林に運び、朝日が降り注ぐ環境2箇所に分けて自然熟成をしています。その根拠は、場所(環境)によって育成状態を観察し、最適な自然環境を見つけ出すことが最重要と考えているからです。
さらに、檜林には殺菌作用があり生木に植菌した場合は椎茸菌が弱体化します。また、雑菌にも大変弱いため露地栽培において檜林は最適な環境となります。椎茸栽培における7条件は、風通しがよく低温の環境、菌の種類、適度な水分と柔らかな日差し、木の皮が厚いホダ木、そして殺菌作用のある檜林です。このことは、今まで観察する中で、自然から学び導き出した私の経験によるものですが、今後も継続し切磋琢磨してまいります。
※ 『 近隣檜林の三か所(高度・方角・水分・檜の立木数)での自然栽培 』
“のとてまり”のようにブランド化され高級品としてすでに販売され、ネット販売では6個入り1万円を超えています。ブランド化における“のとてまり”の条件は、菌種:“のと115”、産地:能登半島周辺、サイズ:傘8cm以上、肉厚3cm以上、巻き込み1cm以上となれば、榾木100本に1個の確立(約0.2%)だそうです。形の良いものは美味しいことは当然ですが、自然界は厳しく、形が良いものばかりを簡単に栽培させてくれません。経験と知識、工夫でその確率をどう向上させていけるか、自然を肌で感じ、日々の観察を怠らないことが大切だと思っています。
調理方法のお勧めは、傘を下にして丸焼きで、 焼き上がったのちに、傘を下にして内側のヒレの部分にバターを置き、バターが熱で溶けた後に少量の醤油をかけてご賞味ください。
また、椎茸はお吸い物などでは風味と歯ごたえを同時に楽しめます。まるでアワビに近い食感に感動します。とにかく一度この椎茸を食べてみてください。さらに椎茸は様々な調味料や食材との相性もよく食物繊維が豊富でローカロリー野菜です。また、近年国産マッタケの収穫量の減少により味のいい椎茸が見直され、全国的にも良質な椎茸は高値で取引されています。
拘りの逸品 茄子の栽培
きっかけは、2005年に遡り、自宅から車で5分ほどの私の友人宅で約50年間毎年栽培していた茄子を見た瞬間に違いを感じました。千両なすの約1.5倍の大きさで、少し皮の色が薄紫かかっていため、興味があり早速食べました。その美味しさに感銘しお願いをして苗をいただきました。その後、毎年我が家の畑でその年の一番上質の実から種を採り、悪銭苦闘しながら妻と協同で現在の茄子に育て上げてきました。毎年友人を自宅にお迎えし、バーベキューにて焼き茄子を振る舞っている内に、その茄子を食べに県外の友人も毎年楽しみにお越しいただいています。また、実験的ではありますが、地元津山の料亭三店舗に提供し、好評をいただくことができました。プロの料理人も認めてもらえる逸品が出来上がったと思っています。
茄子栽培は、夫婦の大切な子供たち
この15年間で最も露地栽培における高いハードルは天候による影響が大きいことが分りました。猛暑だと水やりの量とタイミングで実りが大きく左右されます。また、肥料の量やタイミングも天候と発育状況によっても一つ間違えると病気になり成長が止まります。さらに二股など変形した茄子が出来ることもあります。
ハウス栽培では、成長に関して常に人間が手を加え、茄子の最適な環境を整えて栽培する方法ですが、露地栽培では自然の厳しい環境下での植物が本来持っている生命力を最大活用しての逞しい栽培が可能となります。そこで、最小限の手助けに止め、より高品質になる確立を高めることが出来ると思います。
毎年成長過程を観察する中で、生命力のある種となる実を2~4個に限定し、その際に種専用としてすべての養分が種に濯ぐよう他の実を全て切り落とし、上質の種づくりに心掛けています。そのためには日々観察し、タイミングが重要だと思っています。
さらに天候に影響を受けやすいため、苗は時期を敢えて遅らせて、4回程度に分けて地植えを行っています。これはリスク回避として地植えが一回のみで行えば、天候不順により生命力の弱い種が出来てしまい、今までの苦労が水の泡にならない備えをしています。
※『手作りの温室』 『 種から発芽して苗が育ち 地植えした苗が立派に育っています 』
この茄子の特徴は、長さが25~30cmで、胴回り最大40cmを超える大柄な茄子で、私の知る限りでは国内では初物だと思います。さらに大柄にも関わらず、皮が薄く実質は通常の茄子に比べ粒子が細かくあくが少ない、水分も豊富に含んだ柔らかいものとなっています。とにかく一度ご賞味いただくとその違いはわかっていただけます。水は雨水以外500m程山間の谷からきれいな水をパイプで引いて、雨が降らない日を除き毎日夕方に二時間程度散水しています。
※『 我が家で県外からお越しの友人が茄子の炭火丸焼きをご賞味!』
料理方法のお勧めは、炭火での皮付き丸焼きが最も美味しいと思います。理由は、旨味が凝縮され外に旨味が漏れださない唯一の調理方法だからです。さらに2~3cmの厚みでの皮付き輪切りによるステーキや素揚げがお勧めです。他の料理方法として茄子は油や醤油、味噌、胡椒等の相性が抜群ですので、お漬物、吸い物、鍋料理、天ぷら、炒め物等にも大変美味しいです。どうか皮付きでの調理で、皮の美味しさも同時に味わってください。